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宮崎地方裁判所都城支部 昭和43年(ワ)71号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕そこで、次に被告らの不法行為責任について考える。

(一) 被告日高の故意過失について

被告日高は、前記判示のとおり無権利者であるにもかかわらず、本件土地を被告岩崎に売却しているのであるが、右売却価格は特別の事情もないのに時価を大幅に下廻るものであつたこと、被告日高の申立によりなされた本件土地周辺の買収売渡土地(但し本件係争土地部分を含む)の登記につき、同被告自身右登記が誤りであつたことを認めていること、仮に被告日高が、自創法により亡父に売渡された土地を相続により取得し得た有た筈だと考えていたとしても、それが本件土地であるか否かについては、当時右売渡土地は未登記のままであつたのであり、亡父が生前右土地を占有管理していた事実も見当らず、しかも右亡父の土地は二〇年近くも以前に国から自創法により売渡を受けた土地であるというのに、本件土地は当時開墾されてもおらず、植林された杉が生立したままの山林であつたのであるから、被告日高としては隣接地所有者に土地の境界等について確かめるべきであつたのであり、もしその手続をとつておれば、容易に本件土地が原告らの所有占有する土地であつたことが判明した筈であること、さらに、字図に照らしてみても本件土地全部が「柊平四一一六番七」の土地の一部に含まれるとはにわかに認めがたいこと等の各事実を総合すれば、被告日高のなした右他人の土地の売却につき、被告日高に故意、又は少くとも過失のあつたことは十分に推認され得るものというべきである。

なお、被告岩崎は、無権利者である被告日高から本件土地を買受けたのであるから、右売買契約により右土地につき何らの権利を取得することができず、従つて又、所有者である原告らも右土地所有権を喪失してはいないのであるが、右土地は、前記判示のとおり樹令三十数年の杉の生立する山林であつたのであるから、被告日高としては、右他人所者の山林を売却するに当り、同山林の買受人である契約相手方、又は転買人が右立木を伐採するに至るであろうことは当然予想し得た筈であり、従つて、右転買人である被告井上がなした前記認定にかかる同地上立木の伐採の結果について、被告日高は、不法行為責任を免れないというべきである。

(二) 被告岩崎の故意過失について

被告岩崎は被告日高から原告所有にかかる本件土地を買受け、又被告井上に対して同地上の立木を売却するに当り、立会人千町千年から、売主の被告日高が同人の所有地であると指示した本件土地のうち斜面の中間辺りから下の土地は、字図に合わないから手をつけるなと忠告されており、現に、そのため右部分の立木は被告井上には売却していないのであるが、本件全地上には同時に植裁された樹令三十数年の杉が生立し、周囲の土地とは林相上も画然としており、又本件土地は一つの山丘の斜面であつて、その中間辺りには境界となるような顕著な地形上の変化もみられず、しかも被告岩崎が被告日高から買受けた土地は当時未登記のままであつた上、被告日高により登記された「柊平四一一六番一八」の土地登記簿に表示されている地積(一〇九七平方米)と比較すればもちろんのこと、「同四一一六番七」の土地登記簿表示の地積(五反二八歩)と比べても、本件土地の地積(9348.35平方米)は余りにも大きすぎるばかりか(ちなみに、被告岩崎は、被告日高から買受地は三反位であるとも聞いていたと供述しているのである)、右買受代金も時価に比し常識を逸したきわめて低廉なものであつたのであるから、当然被告岩崎としては、土地買受および立木売却に当つては、被告日高の言い分に疑問を抱き、農業委員会において調査し、又隣地者(とくに原告ら)に境界等について確認を求めるべきであつたにもかかわらず、全くこのような所為に出ておらず、さらに、字図も被告岩崎が供述するようには、必ずしも現地と合致していない(被告岩崎の供述に従えば、別紙添付図面のハとニを結ぶ一辺はなくなる筈である)ことを考えると、被告岩崎が被告日高から買受けた本件土地上に生立していた立木を、被告井上に売却したために、被告井上が右立木を伐採し、原告らの右立木に対する所有権を侵害する結果を惹起したことにつき、被告岩崎には、少くとも過失のあつたことは明らかであるといわなければならない。

(三) 被告井上の故意過失について

被告井上は、被告岩崎から前記本件土地上の立木を買受けるにあたり、被告日高から被告岩崎に対する本件土地の売買契約書(乙第四号証)および字図をみせられたと供述するのであるが、前記判示のとおり、被告井上が買受けた立木が生立していた土地は、必ずしも字図と合致しているとは言い難く、しかも被告井上は登記簿すらみていないのであり(もし登記簿をみておれば、被告日高が同岩崎に売却したという土地が自創法により国から売渡された土地であるにもかかわらず、当時本件土地は山林のままであつたこと、被告岩崎は登記簿上根抵当権しか有していなかつたこと、本件土地の地積は登記簿上に表示されている地積と著しく相違すること等が判明し、被告井上としては、より詳細な調査をしなければならないと考えるきつかけになつたと思われる)、又伐採中に原告から伐採中止の申入れを受けた後も、被告岩崎の言い分のみを鵜呑みにして原告の申入を排斥し、伐採を続けた態度等をみてみると、被告井上には原告ら所有にかかる本件土地上に生立していた立木を伐採したことにつき過失があつたといわざるを得ない。

(四) 損害額について

<証拠>によれば

本件立木は、被告井上による前記伐採当時樹令略三〇数年の杉であつたが、樹令三五年以下の杉は保安上の関係から県条令により伐採を制限されており、その適正伐採期令は通常四〇数年とされているところ、原告らとしては本件土地上に生立していた杉は、右被告井上による伐採時からなお一〇年位育成して後伐採する予定でいたのであり、又本件五の伐木は、現在伐採地に放置されたままになつているため腐朽し、用材として全く使用することができない状態になつている。

そこで、まず右腐朽した本件五の伐木の伐採当時の価格を計算すれば、当時杉原本の市場価格は立方米当り少くとも一万六一七八円(本件四の伐木の競売価格)はしていたので、右伐木計14.183立方米の右価格は二二万九四五二円となるところ、右価格から立方当り二〇〇〇円位の割合により伐採費、運搬費等所要経費を差引くと、右立木の当時の価格は、少くとも二〇万円は下らなかつた。

次に、原告らがなお一〇年間育成した後伐採するつもりでいたところ本件伐採により失つた損害額を算定するに、右伐採当時の本件伐木の市場価格は合計一五二万八四五二円位(約九〇立方米)であつたが、杉は樹令三〇年ごろから四〇年ごろまでが最も成長度が大きく、年間一ヘクタール当り約一〇立方米程度の割合で体積が増えて行くのであり、しかも三〇年生の杉木に比べると四〇年生の杉木は単位当りの価格も三〇パーセントは高くなるのであるから、右伐木はなお一〇年間伐採せずに育成しておくと五〇立米位(八〇万円位)体積が増え、その結果右原本の市場価格は

152万円+80万円=232万円

二三二万円位となるが、これから一立方米当り二〇〇〇円程度の伐採経費(計一四〇立方米)を控除すれば、右伐木の立木の価格は

232万円−28万円=204万円

二〇四万円位となるところ、右判示のとおり四〇年生の杉材は三〇年生の杉材に比して価値が三〇パーセント高くなるのであるから

204万円×1.3=265万2000円

右伐木の一〇年後の価格は二六五万円位となり、従つて原告が失つた得べかりし利益は

265万円−134万円=131万円

(但し、134万円は伐木価格152万円から伐採経費18万円を引いたもの)

少くとも一三〇万円にはなる。

以上の各事実を認め得る。

<証拠判断略>

なお、原告田頭経三は、杉立木の管理については本件伐採時以降二、三年に一回の割合で下刈を行う程度であると供述しているのであり、その費用も特別多額を要するものとは認められないから、右費用は損害額の算定にあたり考慮しないこととする。

さらに、伐採跡地の土地利用による利得の点につき考えるに、原告田頭経三本人供述によれば、原告らは昭和四五年ごろ本件伐採跡地に杉を植林していることが認められるので、次期植林分については、その適正伐期令が本件伐採行為がなかつたときに比べて七年位早く来る計算にはなる。しかしながら、これをもつて直ちに原告らが本件不法行為により受けた損害に填補されるべき利得と考えることについては(この点については主張もないのであるが)、仮にかかる考え方を是認し得るとしても、現在、次期植林分について原告らに現実に右利益が取得されているわけではなく(現在右植林の杉は幼樹にすぎず、現時点においてその取引価値は殆んどないに等しい)、又その金額も確定しがたく、さらに右の考え方を押し進めるならば、不法行為(伐採行為)の後直ちに植林をすれば、得べかりし利益を失つたことによる損害は生じないとさえ言い得るのである。

(福富昌昭)

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